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講演録 ナガラ 早瀬 實社長

「共同開拓」時代
新しい時代の新しい金型経営のヒント

 「8月末までに本社にもう1棟新工場を完成する。ぜひ見学にお越しください」―金型メーカー、ナガラ(名古屋市中川区)の早瀬實社長はこのほど、日本金型工業会西部支部の講演会で、「新しい時代の新しい金型経営」と題し、海外市場の共同開拓や国内で国際価格の金型造り、新卒者の採用秘話など冒頭の呼び掛けをしながら多岐にわたる提案を行った。そのエッセンスをまとめた。

 わが社は、名古屋駅西の近鉄烏森駅から歩いて5分くらいにある。現在、8月末までに本社にもう1棟(北工場増設)完成させ、中枢的な型作りを進めている。本社は、約100人の社員が働き、平均年齢は28才。取引先は約100社にのぼる。南は熊本から北は岩手が範囲。将来的は、ここを技術・機械加工拠点に進化させ、2007年4月に建てた三重県多度町の三重工場と連携し、国内生産拠点を充実させる。ここは今後、5期まで拡張を計画している。

 取引先は、トヨタ自動車はじめ国内自動車メーカー全ての金型を製造している。スズキは、直接やっていない。トヨタで一番多く売れているアクアの骨格はほぼわが社製。またトヨタの自動搬送設備(フィンガー、グリッパー式など)は、わが社製で、トヨタの標準部品になっている。

 日産とはエンジンブロックのクランクシャフトを開発した。板厚50㎜に13㎜の穴径を成功させたのは、わが社が開発したプレス、カムリンクプレスの成果。現在1200tまで作り、トヨタ系列及び岩手大学などに16、17台導入している。

 仕事は自分で作ることを進めている。定年退社したベテランの人たちは、年金を受給してもらい、再び働いてもらっている。その人たちには通常の生産と違い、基本的には週4日、1日6時間以内勤務で、若い人の技術指導と社内で使う手工具を製作してもらっている。

 例えば、メクラピンを抜くブッシュやスパンなど。このため、社内で使う手工具は社外から一切買っていない。市販のものと違うのは、ベテランが現場で使い込んだ工具だから。トヨタ、ホンダからこの工具は楽。ぜひ売って欲しいということで販売している。ベテランが養ってきた技術を商品化した一例だ。

新卒の採用の仕方
 毎年、社員総数の5%、15人ぐらいを採用している。最近は、大変レベルが高くなっている。ここ2、3年は、学校(説明会)に行き、成績の後ろの方は入らない。1番から10番以内を頂戴とお願いをしている。応募は凄く増え、年間約300人の生徒が内緒で面接に来る。今年は現時点で内々定者を12人決めた。ご両親がわが社を選んでくれる。テレビコマーシャルが反響している。

世界を舞台
 今、14カ国、多い時には約30人を海外出張させている。自動車各社が海外工場を立上げる際の応援部隊で、人件費として1人120万円頂戴している。レベルの高い人は、1人180万円。ヨーロッパのトヨタやホンダからは名指しがあり、この場合は、150万円にしている。社員にはお座敷が掛かるくらい努力することを推奨している。

 また、技術者派遣を行っている。自動車メーカーの生技、テクニカルセンターなどに社員を送り、多い時で国内外に30人から40人を派遣している。わが社は、海外に工場は一切持たない。国内で、海外の仕事を受注することを重要視している。

 そこで、ご提案したい。皆さんの会社から人を出してもらい、海外市場を共同開拓しようではないか。例えば、リーマンショックの時は、大手金型メーカーを退社した人がわが社を利用し、海外で働いてもらっている。その人には120万のうち90万円を払い、当社が30万円を頂戴している。派遣は、1日1万円程度、月20万円程度で、3カ月以上実習を受けてもらう。本当にこの人は海外で通用する人かどうかを適正検査する。信用できる人しか派遣しないため。

 また、こうした方法は、高い設備を出し、工場を作るより優位に仕事ができる。技術力を上げ、国際価格で勝負する体制をさらに拡大したい。良い金型を安く、そして、短納期で作る共同開拓をしませんか。

金型新聞 平成27年(2015年)8月10日号

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